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カムシャフトとは?形式など基礎知識を解説!

顧客への的確な説明、競合製品の技術的理解、そして新たなマーケティング戦略の立案において、カムシャフトに関する知識は不可欠です。
しかし、「カムシャフト」と聞くと専門的で難解なイメージを持つ方も少なくないかもしれません。
そこで、この記事では、大手製造業の営業・マーケティング担当者の皆様が、自信を持ってビジネスに活かせるよう、カムシャフトの基本的な定義から主要な形式、その構造、そして製造業における重要性までをわかりやすく丁寧に解説します。
カムシャフトとは?
カムシャフトは、主に自動車やオートバイなどの内燃機関(エンジン)に搭載される、非常に重要な部品の一つです。
その名の通り「カム」と呼ばれる突起が複数配置された「シャフト(軸)」で構成されています。
エンジンの動作において、カムシャフトは吸気バルブと排気バルブの開閉タイミングを制御する役割を担っています。
クランクシャフトの回転と同期して回転し、カム山(ローブ)がバルブを押し下げることで、燃焼室への混合気の吸入と、燃焼ガスの排出を適切なタイミングで行います。
このバルブ開閉のタイミングやリフト量(バルブが開く量)は、エンジンの性能(出力、トルク、燃費、排ガス性能)に大きく影響するため、カムシャフトは「エンジンの頭脳」とも呼ばれることがあります。
その設計や製造精度は、エンジンの特性を決定づける上で極めて重要です。
製造業の皆様にとっては、自社製品の性能向上、競合製品の技術的理解、あるいは新たな製品開発のヒントとして、カムシャフトの基礎知識は欠かせない要素となるでしょう。
カムシャフトを構成する主要部品と各部の役割
カムシャフトは、いくつかの重要な部品で構成されており、それぞれが特定の役割を担っています。これらの部品が連携することで、エンジンのバルブを正確に制御します。
- カム山(ローブ):バルブを直接押し下げる突起部分。
- ジャーナル部(軸受):カムシャフトを支え、スムーズな回転を可能にする部分。
- ギア、スプロケット部:クランクシャフトからの回転力を受け取り、同期させる部分。
カム山(ローブ)の形状と機能
カム山(ローブ)は、カムシャフトの最も特徴的な部分であり、その形状がバルブの開閉タイミング、リフト量、開弁期間を決定します。カム山の形状は、エンジンの特性(高回転型、低回転型、燃費重視型など)に合わせて綿密に設計されます。
- リフト量(バルブが開く最大量):カム山の高さによって決まり、吸排気効率に直結します。リフト量が大きいほど、より多くの混合気を吸入・排出できます。
- 作用角(開弁期間):カム山の幅によって決まり、バルブが開いている時間を指します。作用角が大きいほど、高回転域での出力向上に寄与しますが、低回転域でのトルクが低下する傾向があります。
- オーバーラップ:吸気バルブと排気バルブが同時に開いている期間。排気ガスの慣性を利用して吸気を促進する効果がありますが、過度なオーバーラップは低回転での不安定化を招きます。
これらの要素は、エンジンの出力特性を左右するため、カム山の設計はエンジニアリングの重要なポイントとなります。
ジャーナル部(軸受)
ジャーナル部は、カムシャフトがシリンダーヘッド内でスムーズに回転するための支点となる部分です。
この部分は、ベアリング(軸受)を介してシリンダーヘッドに支持され、カムシャフトが高速で回転する際の摩擦を最小限に抑える役割を担います。
ジャーナル部には、エンジンオイルが供給され、油膜によって金属同士の直接接触を防ぎ、摩耗を抑制します。
適切な潤滑と冷却が行われることで、カムシャフトの耐久性とエンジンの信頼性が保たれます。
ギア、スプロケット部
カムシャフトの端には、クランクシャフトからの回転力を受け取るためのギアまたはスプロケットが取り付けられています。
このギアやスプロケットは、タイミングベルトやタイミングチェーンを介してクランクシャフトと連結され、クランクシャフトの回転に同期してカムシャフトを回転させます。
カムシャフトは、通常、クランクシャフトの半分の速度で回転します(4ストロークエンジンでは、クランクシャフトが2回転する間にカムシャフトが1回転し、吸気・圧縮・燃焼・排気のサイクルを完了させるため)。
この正確な同期が、エンジンのバルブタイミングを正確に保ち、効率的な燃焼を実現するために不可欠です。
近年では、可変バルブタイミング機構(VVTなど)がこのギア/スプロケット部に組み込まれ、エンジンの運転状況に応じてバルブタイミングを最適化する技術も広く普及しています。
カムシャフトの主な形式
カムシャフトの配置方式は、エンジンの構造や性能に大きな影響を与えます。
主な形式として、OHV、OHC、DOHCの3つがあります。
これらの形式は、エンジンの進化とともに発展してきました。
OHV(Over Head Valve)方式のカムシャフト
OHV(Over Head Valve)方式は、「オーバーヘッドバルブ」と訳され、カムシャフトがクランクケース(エンジンの下部)に配置されているのが特徴です。
構造
カムシャフトの回転によってプッシュロッドが押し上げられ、ロッカーアームを介してシリンダーヘッド上部のバルブを開閉します。
特徴
- 構造が比較的単純で、製造コストを抑えやすい。
- カムシャフトの位置が低いため、エンジンの全高を低くしやすい。
- プッシュロッドやロッカーアームといった部品が多いため、慣性重量が大きく、高回転化には不向き。
採用例
かつての自動車エンジンや、現在でも大型トラック、産業用エンジン、一部のハーレーダビッドソンなどに採用されています。
OHC(Over Head Camshaft)方式のカムシャフト
OHC(Over Head Camshaft)方式は、「オーバーヘッドカムシャフト」と訳され、カムシャフトがシリンダーヘッド(エンジンの上部)に配置されているのが特徴です。
OHV方式よりもバルブに近い位置にカムシャフトがあるため、伝達部品が少なくなります。
構造
カムシャフトがシリンダーヘッドに配置され、ロッカーアームやタペットを介してバルブを直接、または短い距離で開閉します。
吸気と排気のバルブを1本のカムシャフトで制御する「SOHC(Single Over Head Camshaft)」が一般的です。
特徴
- バルブ開閉機構の慣性重量が小さく、高回転化に対応しやすい。
- 吸排気効率の向上や、バルブタイミングの精度を高めやすい。
- OHVよりも構造がやや複雑になり、エンジン全高が高くなる傾向がある。
採用例
かつての乗用車エンジンで広く採用され、現在でも一部の車種や小型エンジンで見られます。
DOHC(Double Over Head Camshaft)方式のカムシャフト
DOHC(Double Over Head Camshaft)方式は、「ダブルオーバーヘッドカムシャフト」と訳され、吸気用と排気用にそれぞれ独立したカムシャフトをシリンダーヘッドに配置する方式です。現代の自動車エンジンの主流となっています。
構造
吸気バルブ用と排気バルブ用に2本のカムシャフトを搭載し、それぞれが独立してバルブを駆動します。これにより、バルブの開閉をより精密に制御できます。
特徴
- 吸気と排気のバルブタイミング、リフト量をそれぞれ最適化できるため、高出力・高効率化に優れる。
- 可変バルブタイミング機構との組み合わせにより、全回転域での性能向上や燃費改善、排ガス低減に大きく貢献。
- 構造が最も複雑で、部品点数も多く、製造コストが高くなる傾向がある。エンジン全高も高くなりがち。
採用例
現代のほとんどの乗用車エンジン、高性能スポーツカー、レーシングカーなどに幅広く採用されています。
カムシャフトの動バランス調整が必要な理由
カムシャフトはエンジン内で高速回転する部品であるため、その回転バランスはエンジンの性能、耐久性、快適性に大きく影響します。
動バランス調整とは、回転する部品の重心が回転軸の中心からずれていることによって生じる振動(不釣合い)を取り除く作業です。
カムシャフトの動バランス調整が必要な主な理由は以下の通りです。
振動・騒音の抑制
不釣合いがあると、カムシャフトの回転時に遠心力によって振動が発生します。
この振動はエンジン全体に伝わり、騒音の原因となるだけでなく、運転中の不快感につながります。
エンジンの耐久性向上
継続的な振動は、カムシャフト自体の摩耗や、ジャーナル部、ベアリング、さらにはエンジンブロックやシリンダーヘッドといった周辺部品への過度な負荷となり、早期の故障や寿命短縮の原因となります。
正確なバランス調整は、部品の長寿命化に貢献します。
性能の安定化
不釣合いによる振動は、バルブタイミングのわずかなずれを引き起こす可能性があり、エンジンの吸排気効率や燃焼効率に悪影響を及ぼすことがあります。
バランス調整により、エンジンの性能を安定させ、本来の設計通りの出力を維持できます。
品質と信頼性の確保
現代のエンジンは高精度が求められるため、カムシャフトのような基幹部品の品質は製品全体の信頼性に直結します。
動バランス調整は、製造業における品質管理の重要なプロセスの一つです。
カムシャフトに関するFAQ
Q1.カムシャフトの材質は何ですか?
A1.カムシャフトの材質は、その用途や求められる性能によって異なりますが、一般的には鋳鉄や鍛鋼が用いられます。
特に高負荷がかかる高性能エンジンでは、強度と耐久性に優れた鍛鋼製が採用されることが多いです。
また、軽量化やフリクション低減のために、中空構造や複合材料が研究・実用化されるケースもあります。
Q2.可変バルブタイミング機構(VVT)とカムシャフトの関係は?
A2.可変バルブタイミング機構(VVT: Variable Valve Timing)は、エンジンの運転状況(回転数や負荷)に応じて、カムシャフトの回転位相を変化させることで、バルブの開閉タイミングを最適化する技術です。
これにより、低回転域でのトルク向上、高回転域での出力向上、燃費改善、排ガス低減といった効果を実現します。
カムシャフト自体はVVTの制御を受け、その動きが調整されます。
Q3.カムシャフトの寿命はどのくらいですか?
A3.カムシャフトは、エンジンオイルによる適切な潤滑と冷却が行われていれば、エンジンの設計寿命と同等か、それ以上の耐久性を持つように作られています。
通常、エンジンの寿命が尽きるまで交換の必要がない部品です。
しかし、エンジンオイルの劣化や不足、製造上の欠陥などがあった場合には、摩耗や損傷が発生し、交換が必要となることもあります。
まとめ
カムシャフトは、エンジンの性能を左右する「頭脳」ともいえる重要な部品であり、その設計や形式は、製品の特性、燃費、出力、排ガス性能に直結します。
これらの基礎知識を習得することで、顧客への技術的な説明がより的確になり、競合製品との比較検討、ひいては新たなマーケティング戦略の立案に役立つことでしょう。
技術の進化とともに、カムシャフトも可変バルブタイミング機構などと連携し、より高度な制御が可能になっています。
この基礎を理解し、常に最新の技術動向にアンテナを張ることで、貴社のビジネスにおける競争力向上に貢献できることを願っています。


