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フレーム溶射とは?特徴や適用例を解説します

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製造業の現場において、部品や機械の表面に高い耐摩耗性・耐食性・耐熱性を持たせたいというニーズは非常に多く、その解決手段として「溶射」技術が広く活用されています。

なかでも「フレーム溶射」は、比較的シンプルな設備で導入でき、幅広い材料に対応できることから、繊維・化学・食品・金属・機械・電機など多岐にわたる製造業で採用されてきた歴史ある表面処理技術です。

しかし、「フレーム溶射とはどのような技術なのか」「プラズマ溶射などほかの溶射方法とどう違うのか」「どのような場面で活用できるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、フレーム溶射の基本的な仕組みから種類別の特徴、使用される材料、そして具体的な適用例まで、わかりやすく解説します。



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フレーム溶射とは

フレーム溶射(Flame Spraying)は、燃料ガスと酸素の燃焼によって生成された火炎(フレーム)を熱源として、溶射材料(金属・セラミック・自溶合金など)を溶融または軟化させ、高速の気流とともに基材(母材)の表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理技術です。

溶射技術全体のなかでも最も古い歴史を持つ方法のひとつであり、現在もさまざまな産業分野で幅広く活用されています。

フレーム溶射の基本的な仕組み

フレーム溶射の基本的なプロセスは、以下の流れで進みます。

熱源の生成

アセチレン・プロパン・水素などの燃料ガスと酸素を混合・燃焼させ、2,000〜3,000℃程度の火炎を発生させます。

溶射材料の溶融

ワイヤー(線材)・ロッド(棒材)・粉末状の溶射材料を火炎中に供給し、溶融または半溶融状態にします。

粒子の加速・飛行

溶融した材料粒子を圧縮空気などで加速し、基材表面へ向けて噴射します。

皮膜の形成

高速で飛来した溶融粒子が基材表面に衝突・扁平化・急冷凝固することで、積層した皮膜が形成されます。

この皮膜は、耐摩耗性・耐食性・耐熱性・電気絶縁性など、基材単体では得られない優れた機能を付与することができます。
また、フレーム溶射は基材への熱影響が比較的小さく、大型部品や現地施工(オンサイト施工)にも対応しやすいという特長があります。

他の溶射技術(プラズマ溶射・HVOF溶射など)との違い

溶射技術にはフレーム溶射のほかにも、プラズマ溶射やHVOF溶射(高速フレーム溶射)など複数の種類があります。

それぞれの特徴を比較すると、以下のようになります。

溶射方法 熱源 火炎温度の目安 粒子速度の目安 主な特徴
フレーム溶射 燃料ガス+酸素の燃焼 約2,000〜3,000℃ 約30〜180m/s 設備がシンプル・低コスト・現地施工対応が容易
HVOF溶射(高速フレーム溶射) 燃料ガス+酸素の高圧燃焼 約2,500〜3,000℃ 約600〜900m/s 皮膜密度が高く気孔率が低い・高強度皮膜の形成が可能
プラズマ溶射 プラズマアーク 約6,000〜20,000℃以上 約200〜600m/s 高融点材料(セラミックなど)にも対応・高品質皮膜
アーク溶射 電気アーク 約4,000〜6,000℃ 約100〜200m/s 導電性材料(金属ワイヤー)専用・大面積施工に適する

フレーム溶射は、HVOF溶射やプラズマ溶射と比較すると粒子速度や火炎温度がやや低めであるため、皮膜の密度・密着性においては劣る場合があります。

一方で、設備コストが低く、操作がシンプルで、現地施工にも対応しやすいという点において大きなアドバンテージを持っています。
また、材料の種類(金属・セラミック・自溶合金)が豊富なため、用途に応じた使い分けが可能です。

フレーム溶射の種類と特徴

フレーム溶射は、使用する溶射材料の形態によって大きく3種類に分類されます。

それぞれの仕組みと特徴を解説します。

溶線式フレーム溶射

溶線式フレーム溶射(ワイヤーフレーム溶射)は、ワイヤー(線材)状の溶射材料を火炎中に連続的に送り込み、溶融させて噴射する方式です。

主な特徴

  • 連続的にワイヤーを供給できるため、施工効率(成膜速度)が高い
  • 金属系材料(亜鉛・アルミ・銅・ステンレスなど)を中心に幅広い材料に対応
  • 設備がコンパクトで操作が容易なため、現地施工や大型構造物への施工に適している
  • 防食目的(亜鉛・アルミ溶射)に多く活用される

橋梁・鉄塔・タンクなど大型鋼構造物の防食処理において、亜鉛やアルミのワイヤーを用いた溶線式フレーム溶射が広く採用されています。

溶棒式フレーム溶射

溶棒式フレーム溶射(ロッドフレーム溶射)は、ロッド(棒材)状の溶射材料を火炎中に供給して溶融・噴射する方式です。
セラミック材料の溶射に多く用いられます。

主な特徴

  • ワイヤー化が困難なセラミック材料(アルミナ・ジルコニアなど)を溶射できる
  • 電気絶縁性・耐摩耗性・耐熱性に優れたセラミック皮膜を形成できる
  • ワイヤー式と比較すると成膜速度はやや劣るが、セラミック皮膜形成においては経済的な手法

繊維機械のロールや各種産業用ロールなど、耐摩耗性・耐熱性が求められる部品のセラミック皮膜形成に活用されています。

粉末式フレーム溶射

粉末式フレーム溶射は、粉末状の溶射材料を火炎中に供給して溶融・噴射する方式です。
材料の種類が最も豊富で、複合材料の溶射なども可能です。

主な特徴

  • 金属・セラミック・自溶合金・プラスチックなど、非常に幅広い材料の溶射に対応できる
  • 材料の配合比率を調整することで、機能を複合させた皮膜の形成が可能
  • 自溶合金(ニッケル基・コバルト基など)と組み合わせ、フレーム溶射後に再溶融(フュージング)処理を行うことで、高密度・高密着性の皮膜を得られる
  • ワイヤー式・ロッド式と比べて成膜速度はやや低いが、多様な材料・用途に柔軟に対応できる

自溶合金を用いた粉末式フレーム溶射+フュージング処理は、耐摩耗性・耐食性が特に求められる部品への高性能皮膜形成手法として高く評価されています。

フレーム溶射で使用される主な溶射材料

フレーム溶射では、目的とする皮膜の機能(耐摩耗・耐食・耐熱・電気絶縁など)に応じて、さまざまな種類の溶射材料が使用されます。

金属溶射材料(亜鉛・アルミ・ステンレスなど)

金属材料はフレーム溶射で最も広く使用される材料群です。

代表的なものとその特性を以下に示します。

亜鉛(Zn)

優れた犠牲防食作用を持ち、鋼構造物の防食溶射として最も広く使われる。
橋梁・タンク・パイプラインなどに適用。

アルミニウム(Al)

耐食性・耐熱性に優れ、海洋環境や高温環境での防食・耐熱用途に使用。
亜鉛との合金(亜鉛アルミ合金)も防食用途で広く利用される。

銅(Cu)・銅合金

電気伝導性・熱伝導性に優れ、電気・電子部品や熱交換器部品への溶射に使用。

ステンレス(SUS)

耐食性・耐摩耗性に優れ、食品機械・化学機械など清潔性・耐食性が求められる部品に適用。

モリブデン(Mo)

耐摩耗性・密着性が高く、摺動部品(シャフト・ピストンリングなど)への下地層としても使用される。

セラミック溶射材料(アルミナ・ジルコニアなど)

セラミック材料は、金属では得られない高い耐摩耗性・電気絶縁性・耐熱性・耐食性を付与するために使用されます。

アルミナ(Al₂O₃)

電気絶縁性・耐摩耗性に優れ、繊維機械・印刷機械のロール、電気絶縁部品などへの適用が多い。

ジルコニア(ZrO₂)

優れた耐熱性・断熱性を持ち、遮熱コーティング(TBC)として高温部品(ガスタービン・炉部品など)に適用される。

クロミア(Cr₂O₃)

優れた耐摩耗性・耐食性・耐滑性を持ち、ポンプ部品・印刷ロール・繊維ガイドなどに使用される。

チタニア(TiO₂)

アルミナと複合化することで皮膜靱性を向上させ、耐摩耗用途に使用される。

自溶合金溶射材料(ニッケル基・コバルト基など)

自溶合金(Self-Fluxing Alloy)は、ホウ素(B)やシリコン(Si)を含む合金であり、フレーム溶射後に再溶融(フュージング処理)を施すことで、ガスや酸化物を排出しながら緻密で高密着性の皮膜を形成します。

ニッケル基自溶合金(Ni-B-Si系)

耐摩耗性・耐食性に優れ、ポンプ部品・バルブ・スクリューなど耐摩耗・耐食用途に幅広く使用される。ハードネス(硬さ)のバリエーションが豊富。

コバルト基自溶合金(Co-Cr-W系)

高温耐摩耗性・耐食性に非常に優れ、高温環境でのバルブシートや軸受部品などへの適用が多い。

炭化物複合自溶合金(WC-Ni系など)

炭化タングステン(WC)などの硬質粒子を分散させることで、さらに高い耐摩耗性を実現。過酷な摩耗環境での部品に適用される。

フレーム溶射の主な適用分野・適用例

フレーム溶射は、その多様な材料と皮膜機能から、非常に幅広い産業分野で活用されています。

ここでは、製造業の主要な業種別に具体的な適用例を紹介します。

繊維・化学・医薬品業界への適用

繊維業界では、糸・繊維を高速で案内・巻き取りするガイドローラーやスネルワイヤーなど摩耗が激しい部品に対し、アルミナやクロミアなどのセラミック溶射が広く適用されています。
セラミック皮膜により耐摩耗性を大幅に向上させ、部品の長寿命化と糸切れ防止を実現します。

化学・医薬品業界では、腐食性薬品や溶剤にさらされるポンプ部品・バルブ・シール部品・攪拌翼などへの耐食溶射が活用されています。
ステンレスやニッケル基自溶合金の溶射により、耐食性を高め設備の長寿命化と安定稼働を支えています。

また、医薬品製造設備では清潔性・耐薬品性が求められるため、溶射皮膜による表面改質が効果的です。

食品・資源・ゴム業界への適用

食品業界では、食品加工機械の搬送ロール・コンベアロール・計量部品などに溶射が適用されています。
ステンレス溶射やセラミック溶射により耐食性・耐摩耗性・衛生性を確保し、食品の安全性と設備の安定稼働を両立します。

資源・エネルギー業界では、石油・ガスプラントや鉱山設備のポンプ・バルブ・配管部品など、腐食性環境や摩耗環境にさらされる機器への防食・耐摩耗溶射が行われています。
亜鉛・アルミ系の防食溶射や、自溶合金溶射による耐摩耗皮膜が重要な役割を担っています。

ゴム・プラスチック業界では、押出機スクリューやカレンダーロールなど摩耗・腐食が進行しやすい部品への溶射が適用されています。
炭化物系自溶合金や硬質クロム代替としてのHVOF溶射・フレーム溶射が、環境負荷低減と耐摩耗性向上の観点から注目されています。

鉄鋼・金属・機械・電機業界への適用

鉄鋼・金属業界では、製鉄ラインの各種ロール(連続鋳造ロール・プロセスラインロールなど)へのセラミック・自溶合金溶射が広く行われており、高温・高荷重・腐食環境での耐久性向上に貢献しています。
また、鋼構造物(橋梁・タンク・鉄塔など)への亜鉛・アルミ系防食溶射も重要な適用例です。

機械業界では、シャフト・ベアリング部・シリンダー・金型など、摩耗・腐食・寸法不良が生じた部品の寸法修復(肉盛り溶射)にフレーム溶射が活用されています。
損傷した部品を溶射で補修・再生することで、部品交換コストの大幅な削減が可能です。

電機業界では、モーターの絶縁部品や電気接点部品へのセラミック溶射(アルミナなど)による電気絶縁皮膜の形成が行われています。
また、放熱性向上を目的とした銅・アルミ溶射も電機部品に適用されています。

フレーム溶射に関するFAQ

Q1.フレーム溶射とHVOF溶射(高速フレーム溶射)はどう違いますか?

A1.どちらも燃料ガスと酸素の燃焼を熱源とする溶射技術ですが、HVOF溶射は燃焼圧力を高めることで粒子速度を大幅に高め(600〜900m/s)、より緻密で高密着性の皮膜を形成できます。

一方、通常のフレーム溶射は粒子速度がやや低め(30〜180m/s)ですが、設備コストが低く、現地施工にも対応しやすいという利点があります。

用途の要求品質と予算に応じて使い分けることが重要です。

Q2.フレーム溶射で形成された皮膜の厚さはどのくらいですか?

A2.フレーム溶射の皮膜厚さは、目的や材料によって異なりますが、一般的には0.1mm〜数mm程度の範囲で施工されます。

防食目的(亜鉛・アルミ溶射)では100〜200μm程度、耐摩耗・寸法修復目的では0.5mm〜数mmが施工されることもあります。

適切な皮膜厚さは用途・材料・基材の状態などを総合的に判断して決定します。

Q3.フレーム溶射は現地施工(オンサイト)は可能ですか?

A3.可能です。
フレーム溶射(特に溶線式)は設備がコンパクトで可搬性が高く、現地施工に対応しやすい溶射方法です。

橋梁・タンク・大型構造物など工場に持ち込めない構造物への防食溶射施工は、現地でのフレーム溶射が広く行われています。

まとめ

フレーム溶射は、製造業における「部品の長寿命化」「設備の安定稼働」「メンテナンスコストの削減」という課題解決に直結する有効な表面処理技術です。

自社の設備・部品にフレーム溶射の導入を検討されている場合は、ぜひ専門業者にご相談ください。
貴社の課題に最適な溶射材料・施工方法をご提案いたします。

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