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アーク溶射とは?特徴や適用例、使用される溶射材料を解説!

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自社製品や設備の「耐久性向上」や「防食対策」において、最適な表面処理技術の選択に課題を感じていませんか?
数あるコーティング技術の中でも、高い成膜速度と優れた密着力を誇り、大型構造物から精密機械部品まで幅広く採用されているのが「アーク溶射」です。
本記事では、アーク溶接の基本的な仕組みや他の溶射技術との違い、使用される代表的な金属材料、そして具体的な産業別の適用例までを専門的かつわかりやすく解説します。



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アーク溶射とは

アーク溶射(Arc Spraying)とは、2本のワイヤー状の金属材料(溶射材料)を電極として使用し、両ワイヤー間に発生させた電気アーク(放電)の熱でワイヤーを溶融させ、圧縮空気やガスによって微粒子化・加速し、対象物(基材)の表面に吹き付けて皮膜を形成する溶射技術です。

溶射技術には、フレーム溶射・プラズマ溶射・高速フレーム溶射(HVOF)・アーク溶射など複数の方式が存在しますが、アーク溶射はその中でも特に「コスト効率」と「生産性」に優れた工法として、インフラ設備から産業機械まで幅広く活用されています。

アーク溶射のプロセスは大きく以下のステップで構成されます。

  1. ワイヤー供給:2本の金属ワイヤーを溶射ガンに連続的に送り込む
  2. アーク放電と溶融:ワイヤー先端間に直流電流を流し、アーク放電により金属を溶融する
  3. 微粒子化と加速:圧縮エアまたはガスで溶融金属を微細粒子(液滴)として噴霧する
  4. 皮膜形成:飛翔した溶融粒子が基材表面に衝突・扁平化し、積層することで皮膜が形成される

アーク溶射の特徴

アーク溶射は、他の溶射方式と比較したときに以下のような技術的特徴を持ちます。

項目 アーク溶射 フレーム溶射 プラズマ溶射 HVOF溶射
熱源 電気アーク 燃焼ガス炎 プラズマジェット 高速燃焼ガス
溶射材料 導電性ワイヤー ワイヤー・粉末・棒 粉末 粉末
火炎温度 約4,000℃以上 約3,000℃ 約10,000℃以上 約2,700~3,000℃
成膜速度 非常に高い 中程度 中程度 中程度
皮膜密着力 高い やや低い 非常に高い 非常に高い
設備コスト 低い 低い 高い 高い
現場施工性 ◎(優秀)

アーク溶射の最大の特徴は、「導電性のある金属ワイヤーのみを溶射材料として使用できる」という制約がある一方で、「設備がシンプルで可搬性が高く、大面積への現場施工が容易」である点です。

特に、橋梁・プラント設備・タンクなど大型構造物への防食コーティングにおいては、ほかの溶射方式では対応しにくい規模の施工も、アーク溶射であれば効率よく実施することが可能です。

アーク溶射のメリット

アーク溶射が多くの製造業・インフラ業界で採用され続ける理由は、以下に挙げる多岐にわたるメリットにあります。

① 高い成膜速度・施工効率

アーク溶射はフレーム溶射やプラズマ溶射と比較して、単位時間あたりの溶射量(溶射速度)が非常に大きく、広面積の施工を短時間で完了させることができます。

これにより、大型設備や構造物に対しても現実的なコストと工期での施工が可能になります。

② 設備コストの低さと可搬性

アーク溶射装置は、プラズマ溶射装置やHVOF装置と比較してシステム構成がシンプルであり、設備費用を大幅に抑えることができます。

また、装置自体が軽量・コンパクトであるため、工場内だけでなく橋梁や屋外タンクなど現地施工(オンサイト施工)にも対応しやすく、可搬性に優れています。

③ 優れた皮膜密着力

適切なブラスト前処理(サンドブラスト・グリットブラストなど)を施した基材に対して、アーク溶射皮膜は非常に高い密着強度を発揮します。

皮膜と基材の間に形成されるアンカー効果により、厚膜施工においても剥離・浮きのリスクを抑えることができます。

④ 厚膜施工への対応

アーク溶射は、数十μm(マイクロメートル)から数mmに及ぶ厚みの皮膜形成が可能であり、防食目的の薄膜コーティングから、摩耗した機械部品の寸法復元(肉盛り溶射)まで、用途に応じた膜厚調整が容易です。

⑤ 基材への熱影響が比較的小さい

アーク溶射では溶融した金属粒子が高速で飛翔し、基材に衝突した直後から急冷されるため、溶接加工のように基材全体が高温にさらされることがありません。

このため、熱変形や変質を嫌う部品や構造物への適用においても比較的安心して施工することができます。

⑥ 多様な溶射材料への対応

導電性を持つ金属ワイヤーであれば、亜鉛・アルミニウム・銅・ステンレス鋼・炭素鋼など多種多様な材料に対応可能です。

また、2本の異なる金属ワイヤーを組み合わせて同時に溶射することで、合金皮膜や疑似合金皮膜を形成する「擬似合金溶射」も実現できます。

アーク溶射のデメリット

アーク溶射は多くのメリットを持つ優れた技術ですが、採用にあたっては以下のデメリット・制約についても正しく理解しておく必要があります。

① 使用できる溶射材料が「導電性金属ワイヤー」に限定される

アーク溶射の最大の制約として、電気アークを発生させるために溶射材料が「電気を通す金属ワイヤー状のもの」でなければならない点が挙げられます。

セラミックスや超硬合金など、電気絶縁性の高い材料や粉末状の材料には対応できません。
高硬度のセラミックス皮膜や高機能皮膜が必要な場合は、プラズマ溶射やHVOF溶射の選択が適しています。

② 皮膜の気孔率がやや高い

アーク溶射で形成された皮膜は、プラズマ溶射やHVOF溶射と比較すると皮膜内の気孔(ポア)が多くなる傾向があります。

気孔率が高いと、腐食性環境下では皮膜内部への腐食因子の侵入リスクが上がるため、高度な耐食性が求められる環境では封孔処理(シーリング処理)を併用することが一般的です。

③ 皮膜の酸化が生じやすい

アーク溶射では大気中で溶融・飛翔するプロセスの性質上、溶融金属粒子が大気中の酸素と反応して酸化物が皮膜中に取り込まれやすい傾向があります。

これにより、皮膜の純度や特定の物理特性が低下する場合があります。
不活性ガス(窒素など)を噴霧ガスとして使用することで酸化を抑制する手法も存在しますが、コストが上昇します。

④ 高硬度皮膜の形成が難しい

アーク溶射で使用できる金属ワイヤー材料の硬度には限界があるため、超高硬度な耐摩耗皮膜(例:WC-Co系超硬皮膜など)の形成はアーク溶射単体では難しく、HVOF溶射などの他の工法が選択されます。

⑤ 騒音・粉塵への対策が必要

アーク溶射施工時には、圧縮エアによる噴霧に伴う騒音や金属粉塵が発生します。

作業環境の安全管理として、適切な防護措置(防音・集塵設備、作業者の個人保護具着用など)を整備することが求められます。

アーク溶射で使用される代表的な溶射材料と特性

アーク溶射で使用できる溶射材料は、電気伝導性を有する金属ワイヤーに限られますが、その中でも産業上の用途に応じた多様な材料が選択・活用されています。

以下に、代表的な材料とその特性をご紹介します。

亜鉛(Zn)および亜鉛-アルミニウム合金(防食・防錆)

亜鉛(Zn)は、アーク溶射における最も使用頻度の高い溶射材料の一つです。

鉄鋼基材に対して「犠牲陽極作用(ガルバニック防食)」を発揮し、皮膜に傷が生じた場合でも亜鉛が優先的に腐食されることで基材の鉄鋼を保護します。

亜鉛-アルミニウム合金(ZnAl合金、代表的には亜鉛85%・アルミニウム15%の組成)は、純亜鉛よりも優れた耐食性と密着力を兼ね備えており、特に海洋環境・塩害環境・工業地帯などの過酷な腐食条件下での長期防食に広く適用されています。

  • 主な特性犠牲防食作用、優れた耐塩害性、長期防食
  • 代表的な適用橋梁、海洋構造物、タンク、鉄骨構造物

アルミニウム(Al)(耐食・耐熱)

アルミニウム(Al)は、表面に安定した酸化アルミニウム(Al₂O₃)の不動態皮膜を形成する性質から、高い耐食性を発揮します。

また、亜鉛よりも軽量であり、耐熱性にも優れることから、熱を受ける環境下での防食・耐熱コーティングとして有効です。

亜鉛と異なり、アルミニウムは酸性環境に対する耐食性が亜鉛より低い場合がありますが、中性〜アルカリ性環境や高温環境では亜鉛を上回る耐食性能を示します。

  • 主な特性高耐食性、軽量、耐熱性(高温酸化雰囲気への耐性)
  • 代表的な適用排気系部品、高温プラント設備、航空・宇宙分野の一部部品

銅(Cu)および銅合金(導電性・熱伝導性)

銅(Cu)は優れた電気伝導性と熱伝導性を持つため、電気・電子部品における導電性付与や、電磁波シールド(EMCシールド)コーティングに使用されます。

また、銅合金(例:青銅、黄銅)は耐摩耗性や耐食性が向上しており、軸受け部品や摺動部品への適用にも用いられます。

  • 主な特性高い電気伝導性・熱伝導性、耐食性(銅合金)
  • 代表的な適用電磁波シールド、ヒートシンク、導電性コーティング、軸受け補修

炭素鋼・ステンレス鋼(耐摩耗性・肉盛補修)

炭素鋼やステンレス鋼(SUS系)のワイヤーは、摩耗した機械部品の寸法復元(肉盛り溶射)や耐摩耗性皮膜の形成に多く用いられます。

特に、シャフト・ロール・スリーブなどの回転部品や摺動部品において、使用によって消耗した表面を溶射によって元の寸法に復元する「肉盛補修」は、部品の廃棄・新品交換コストを大幅に削減できる手法として重宝されています。

ステンレス鋼(SUS304・SUS316など)のワイヤーを使用した溶射皮膜は、耐食性と耐摩耗性の両方を兼ね備えており、食品機械・化学プラント・医薬品製造設備などの衛生性・耐食性が求められる環境にも適用されます。

  • 主な特性耐摩耗性、寸法復元性、耐食性(ステンレス鋼)
  • 代表的な適用シャフト・ロール・スリーブ類の肉盛補修、産業機械の耐摩耗コーティング

産業別・用途別のアーク溶射の適用例

アーク溶射は、その優れた施工効率・コスト性能・皮膜特性を活かして、さまざまな産業・用途において採用されています。

以下に、代表的な産業別の適用例を詳しく解説します。

インフラ・大型構造物の長期防食(橋梁、プラント配管、タンク)

アーク溶射が最も広く活用されている分野の一つが、橋梁・鉄塔・プラント配管・貯蔵タンクなどの大型鉄鋼構造物における長期防食コーティングです。

従来の塗装防食と比較して、亜鉛または亜鉛-アルミニウム合金によるアーク溶射防食は以下の点で優れています。

  • 犠牲防食作用により、皮膜に傷が生じても基材鉄鋼の腐食が抑制される
  • 塗装と比較して格段に長い防食寿命(数十年以上)を実現する
  • メンテナンスサイクルの延長によるライフサイクルコスト(LCC)の大幅削減
  • 厚膜施工が可能であり、塩害・飛沫帯など過酷な環境にも対応できる

国土交通省や鉄道・道路関連の設計基準においても、重防食仕様として金属溶射(亜鉛・アルミニウム系)の採用が規定・推奨されており、新設・更新工事の双方で採用実績が積み重ねられています。

機械部品の摩耗対策と寸法復元(シャフト、ロール類の肉盛)

製造業における機械設備の維持管理において、使用による摩耗・腐食で寸法が変化した部品のリストア(肉盛補修)はアーク溶射の重要な適用分野です。

たとえば、繊維機械・製紙機械・印刷機械・圧延設備などで使用されるロール類(ゴムロール、金属ロール)や、各種産業機械のシャフト・スリーブ・軸受け座面などは、長期使用による摩耗で規定寸法を外れた場合でも、アーク溶射による肉盛補修で部品を復元・再使用することが可能です。

これにより、

  • 高価な部品の廃棄コストを削減できる
  • 設備停止時間(ダウンタイム)を最小限に抑えられる
  • 新品部品の調達リードタイムに依存しない迅速な復旧が可能となる

さらに、初期製作時よりも耐摩耗性の高い溶射材料を選択することで、部品の耐久性そのものを向上させることも可能です。

電子・電機分野における機能性皮膜(電磁波シールド、導電性付与)

電子・電機分野では、銅や銅合金のアーク溶射を活用した電磁波シールド(EMCシールド)コーティングが注目されています。
電子機器筐体の内面に銅系の導電性溶射皮膜を施すことで、外来ノイズの遮蔽および機器内部からの電磁波漏洩を防止する効果が得られます。

プラスチック筐体など本来導電性を持たない材料に対しても、適切な前処理を施すことで銅系アーク溶射皮膜を形成し、導電性・電磁波遮蔽性を付与することが可能です。
電子機器の高密度化・高周波化が進む現代において、EMC対策の一手段としてアーク溶射の重要性は高まっています。

スパッタリング装置のチャンバー内シールド板への適用

半導体・ディスプレイ製造プロセスで用いられるスパッタリング装置のチャンバー内部のシールド板(防着板)へのアーク溶射適用も、重要な用途の一つです。

スパッタリングプロセスでは、ターゲット材料の微粒子がチャンバー内壁のシールド板に堆積します。
このシールド板に粗面化(粗さを高める)溶射皮膜を施すことで、堆積した皮膜がシールド板から剥離してパーティクル(異物)となり基板を汚染するリスクを大幅に低減することができます。

アルミニウムや各種金属のアーク溶射皮膜は、その粗面構造と優れた密着性によって、スパッタリング堆積物を強固に保持する効果(トラップ効果)を発揮し、半導体製造における歩留まり向上・クリーン度維持に貢献しています。

まとめ

最後に、重要なポイントを整理します。

  • アーク溶射とは、2本の金属ワイヤー間の電気アークで溶融した金属を圧縮エアで噴霧・皮膜化する溶射技術である
  • 最大のメリットは、高い成膜速度・低設備コスト・優れた可搬性であり、大型構造物への現場施工に特に優れる
  • 主なデメリットとして、使用材料が導電性ワイヤーに限定されること、皮膜気孔率がやや高いことが挙げられる
  • 代表的な溶射材料は、防食用の亜鉛・亜鉛-アルミニウム合金、耐熱・耐食用のアルミニウム、導電性用の銅・銅合金、耐摩耗・補修用の炭素鋼・ステンレス鋼など
  • 適用分野は、橋梁・タンク・プラントの長期防食、機械部品の肉盛補修、電磁波シールド、スパッタリング装置のシールド板など多岐にわたる

アーク溶射は、製造業における製品の高付加価値化・設備の長寿命化・メンテナンスコスト削減を実現する、非常に実用性の高い表面処理技術です。

表面処理技術の選定や防食・耐摩耗対策でお悩みの際は、ぜひアーク溶射の活用をご検討ください。

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