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耐摩耗性とは?材料選択から表面処理までノウハウを徹底解説!

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耐摩耗性は、さまざまな産業において重要な素材選定基準の一つです。
機械部品や建材、工具などにおいては、摩耗による劣化が製品寿命や安全性に大きく影響するため、その耐久性を高めることが求められています。

近年では、省力化投資や生産性向上の観点からも、耐摩耗性の高い素材や加工技術への関心が高まりつつあります。

この記事では、「耐摩耗性とは何か?」という基本的な知識から、耐摩耗性を高めるための材料選定や表面処理技術までを体系的にご紹介いたします。



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耐摩耗性とは?

耐摩耗性の定義

耐摩耗性とは、材料が摩擦によって表面が損耗し、質量や体積が減少する現象(摩耗)にどれだけ耐えられるかを示す特性です。

摩耗は、二つの物体が接触し、相対運動する際に発生する表面の損傷であり、材料の物理的、化学的特性、接触条件、環境など多くの要因によって引き起こされます。

摩耗の種類には、主に以下のものが挙げられます。

  • アブレシブ摩耗(研削摩耗):硬い粒子が柔らかい表面を削り取る摩耗。
  • 凝着摩耗:接触する二つの表面間で原子間力が働き、一部が引きちぎられる摩耗。
  • 疲労摩耗:繰り返し応力によって表面に亀裂が生じ、材料が剥離する摩耗。
  • 腐食摩耗:化学反応と機械的摩耗が同時に作用する摩耗。

耐摩耗性の評価は、JIS規格(例: JIS K 7218 プラスチックの摩耗試験方法、JIS R 1600 ファインセラミックスの摩耗試験方法など)に基づき、特定の条件下での質量減少量や体積減少量、深さなどを測定することで行われます。

産業界における耐摩耗性の重要性

産業界において耐摩耗性は、製品の信頼性、安全性、経済性に直結する極めて重要な特性です。耐摩耗性の低い部品を使用すると、以下のような問題が発生します。

製品寿命の短縮

摩耗により部品が早期に劣化し、製品全体の寿命が短くなります。

メンテナンスコストの増加

部品交換や修理の頻度が増え、それに伴うコスト(部品代、人件費、ダウンタイム)が増大します。

安全性・信頼性の低下

摩耗による部品の破損が、重大な事故や故障につながる可能性があります。

生産性・効率の低下

予期せぬ故障による生産ラインの停止や、性能低下による作業効率の悪化を招きます。

環境負荷の増大

部品交換頻度が増えることで、資源の消費や廃棄物が増加します。

これらの問題を解決し、持続可能な生産活動を行うためには、用途や環境に応じた最適な耐摩耗性材料の選定や表面処理技術の活用が不可欠です。

たとえば、建設機械のバケット、搬送ラインのガイドレール、金型、ポンプの羽根車、工具など、さまざまな分野で耐摩耗性が求められます。

高耐摩耗性材料の種類と特性

金属材料

工具鋼・高炭素鋼

工具鋼や高炭素鋼は、その高い硬度と強度から優れた耐摩耗性を示します。
熱処理を施すことで、さらに硬度を高めることが可能です。

主に金型、切削工具、治具、耐摩耗部品などに使用されますが、錆びやすいという欠点があります。

  • 主な用途:金型(プレス金型、ダイカスト金型)、切削工具(ドリル、エンドミル)、治具、軸受
  • 特性:高硬度、高強度、熱処理による硬化、比較的安価
  • 注意点:耐食性が低い、靭性が低い場合がある

ステンレス鋼(マルテンサイト系)

マルテンサイト系ステンレス鋼(例: SUS420J2、SUS440C)は、クロムを多く含むことで耐食性を持ちながら、焼入れ・焼戻し処理によって高い硬度と耐摩耗性を発揮します。

耐食性と耐摩耗性の両方が求められる環境で重宝されます。

  • 主な用途:食品機械部品、医療機器部品、ポンプ部品、バルブ部品、ナイフ
  • 特性:耐食性と高硬度を両立、熱処理による硬化
  • 注意点:オーステナイト系やフェライト系に比べ加工性が劣る

超硬合金

超硬合金は、タングステンカーバイド(WC)などの硬質炭化物をコバルト(Co)などの結合材で焼結した複合材料です。

非常に高い硬度と耐摩耗性を持ち、高温環境下でもその特性を維持します。切削工具のほか、耐摩耗部品として広く利用されています。

  • 主な用途:切削工具(チップ、ドリル)、金型部品(パンチ、ダイス)、耐摩耗部品、鉱山機械部品
  • 特性:極めて高い硬度、優れた耐摩耗性、高温強度
  • 注意点:脆性が高い、高コスト

セラミックス材料

アルミナセラミックス

アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)を主成分とするセラミックスで、汎用性が高く、比較的安価で入手しやすい材料です。

高硬度、耐熱性、電気絶縁性、耐食性に優れ、幅広い分野で利用されています。

  • 主な用途:ポンプ部品、メカニカルシール、摺動部品、研磨材、電気絶縁部品
  • 特性:高硬度、耐熱性、耐食性、電気絶縁性、比較的安価
  • 注意点:靭性が低い(脆い)

炭化ケイ素セラミックス

炭化ケイ素(SiC)を主成分とするセラミックスは、アルミナよりもさらに高硬度で、優れた熱伝導性、耐熱衝撃性、耐食性を持ちます。

半導体製造装置部品やメカニカルシールなど、過酷な環境下での使用に適しています。

  • 主な用途:メカニカルシール、軸受、半導体製造装置部品、炉材、ヒーター
  • 特性:極めて高い硬度、高熱伝導性、耐熱衝撃性、耐食性
  • 注意点:加工が難しい、高コスト

窒化ケイ素セラミックス

窒化ケイ素(Si3N4)を主成分とするセラミックスは、高強度、高靭性(セラミックスの中では比較的)、耐熱衝撃性、耐食性に優れています。

特に高温での強度維持能力が高く、エンジン部品や切削工具など、高性能が求められる用途に用いられます。

  • 主な用途:エンジン部品(ターボチャージャー、グロープラグ)、軸受、切削工具、溶接ノズル
  • 特性:高強度、高靭性、耐熱衝撃性、耐食性、軽量
  • 注意点:高コスト、加工が難しい

樹脂材料

超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)

超高分子量ポリエチレンは、非常に長い分子鎖を持つポリエチレンで、極めて低い摩擦係数と優れた耐摩耗性、耐衝撃性を持ちます。

自己潤滑性があり、軽量であるため、摺動部品や搬送ガイドなどに広く利用されています。

  • 主な用途:ガイドレール、ホッパー内張り、スキッドプレート、人工関節(医療用)
  • 特性:低摩擦係数、高耐摩耗性、高耐衝撃性、軽量、耐薬品性、自己潤滑性
  • 注意点:耐熱性が低い、クリープ特性

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

PEEKは、スーパーエンジニアリングプラスチックの一つで、高強度、高耐熱性(連続使用温度250℃)、耐薬品性、耐放射線性、そして優れた耐摩耗性を兼ね備えています。

軽量でありながら金属代替として、航空宇宙、医療、半導体分野などで採用されています。

  • 主な用途:航空宇宙部品、医療機器部品、半導体製造装置部品、自動車部品、摺動部品
  • 特性:高強度、高耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、軽量
  • 注意点:高コスト、加工が難しい場合がある

ナイロン系樹脂(PA6、MCナイロン)

ナイロン系樹脂(ポリアミド)は、機械的強度、耐摩耗性、自己潤滑性に優れ、比較的安価で加工しやすい材料です。

特にMCナイロン(モノマーキャストナイロン)は、優れた機械的特性と耐摩耗性を持つため、金属代替として歯車や軸受などに用いられます。

  • 主な用途:ギア、軸受、ローラー、ライナー、プーリー
  • 特性:高強度、耐摩耗性、自己潤滑性、耐薬品性、加工性
  • 注意点:吸水性があるため寸法安定性に影響、耐熱性が低い

耐摩耗性向上の表面処理・コーティング技術

素材そのものの選定に加え、表面処理やコーティングは、既存の材料の耐摩耗性を劇的に向上させる有効な手段です。

これにより、コストを抑えつつ高性能な部品を実現できます。

硬質クロムメッキ

硬質クロムメッキは、電気メッキによって素材表面に硬質なクロム層を形成する技術です。

高硬度(Hv800~1000)、低摩擦係数、優れた耐食性を持ち、比較的厚膜(数μm~数百μm)を形成できるため、摩耗環境下での耐久性向上に寄与します。

  • 特徴:高硬度、低摩擦、耐食性、厚膜形成可能、比較的安価
  • 主な用途:金型、油圧シリンダー、摺動部品、ロール、シャフト
  • 注意点:六価クロムを使用する場合、環境規制への対応が必要。皮膜に微細なクラックが発生しやすい。

窒化処理

窒化処理は、鋼材の表面に窒素原子を浸透させ、表面層を硬化させる熱処理技術です。

ガス窒化、塩浴窒化、プラズマ窒化などの種類があり、素材の硬度と疲労強度を向上させ、耐摩耗性を高めます。
寸法変化が少ないため、精密部品にも適用可能です。

  • 特徴:表面硬化、疲労強度向上、耐摩耗性向上、寸法変化が少ない、耐食性向上(一部)
  • 主な用途:ギア、クランクシャフト、金型、エンジン部品、工具
  • 注意点:処理時間が長い場合がある、適用可能な材料が限定される

DLCコーティング

DLC(Diamond-Like Carbon)コーティングは、ダイヤモンドに似た構造を持つ非晶質の炭素薄膜を形成する技術です。

非常に高い硬度(Hv1,500~3,000以上)、極めて低い摩擦係数、優れた耐食性、生体適合性を持ち、さまざまな分野で注目されています。

  • 特徴:超高硬度、超低摩擦係数、耐食性、生体適合性、薄膜(数μm以下)
  • 主な用途:切削工具、金型、自動車部品(エンジン、駆動系)、医療機器、光学部品
  • 注意点:高コスト、膜厚が薄いため母材の硬度が影響、高温環境下での安定性

セラミックコーティング

セラミックコーティングは、PVD(物理蒸着)やCVD(化学蒸着)、溶射などの技術を用いて、硬質なセラミックス層を表面に形成します。

TiN(窒化チタン)、TiCN(炭窒化チタン)、AlTiN(窒化アルミニウムチタン)などが代表的で、高硬度、耐熱性、耐酸化性、耐食性に優れ、特に切削工具や金型の寿命向上に大きく貢献します。

  • 特徴:高硬度、耐熱性、耐酸化性、耐食性、多様な種類
  • 主な用途:切削工具、金型、エンジン部品、タービンブレード、摺動部品
  • 注意点:処理温度、膜厚、密着性などが用途によって異なる

まとめ

耐摩耗性は、製品の寿命、安全性、そして生産効率に直結する極めて重要な特性です。

材料選定や表面処理技術の選択においては、使用環境(温度、荷重、雰囲気など)、求められる性能、コスト、加工性などを総合的に考慮することが重要です。

最適な耐摩耗性対策を講じることで、製品の信頼性向上、メンテナンスコスト削減、生産性向上といった多大なメリットを享受できます。

もし、貴社の製品や部品の耐摩耗性向上に関して具体的な課題やお悩みがありましたら、ぜひ光栄テクノシステムにご相談ください。
用途に合わせた最適なソリューションをご提案させていただきます。

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